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Horween Leather / ホーウィンレザー

アメリカの中西部、シカゴのダウンタウンの外れに創業100年を超える老舗レザータナーがある。最初にここを訪れたのは数年前、4代目のオーナー、スッキプは彼らが守り続けている昔ながらの製法で作られるコードバンについて熱く語ってくれた。「その昔はアメリカでの交通手段は馬が一般的で、コードバンの原料になる馬のシェルも手に入りやすかった」

Category:Material
Date:2009.08.01
Tags: #chicago #cordovan #horweenleather #visvim

シカゴの5代目

 

アメリカの中西部、シカゴのダウンタウンの外れに創業100年を超える老舗レザータナーがある。最初にここを訪れたのは数年前、4代目のオーナー、スッキプは彼らが守り続けている昔ながらの製法で作られるコードバンについて熱く語ってくれた。「その昔はアメリカでの交通手段は馬が一般的で、コードバンの原料になる馬のシェルも手に入りやすかった」

独特な光沢と、しなやかできめ細やかなコードバンのシェルを一枚一枚見せながら彼は続ける。「このコードバンは繊維が非常に細かく、カミソリを研いだりする革砥(かわと)に使われるくらいなんだよ、そしてこの独特な光沢と質感で乗馬用のブーツや軍の将校用のシューズに使用されるようになり、次第に丈夫で安定性が高いコードバンは、メンズシューズの素材としても貴重で、ユニークなレザーとして使われ始めたのではないか」

コードバンとはいわゆる革ではなく、馬などのお尻の皮膚と筋肉の間に存在する繊維質の膜である。

「うちのコードバンはピットタンニン(ピットと呼ばれるプールにつけ込むことで鞣される)で植物タンニンだけを使って6ヶ月かけて鞣すんだよ。私の知る限り、今、コードバンを作っているのはうちを含めて世界に2社くらいしかなんだよ。私たちはこの時間をかけてピットでゆっくり鞣す、この製法をもちいるのが最も良いコードバンを作れると思っている」

このダウンタウンにある工場はレンガ作りの建物で創業当時の雰囲気を漂わせる、1階ではコードバンの原料になる馬の原皮を裁断しピットにつけ込み鞣すプロセスから始まる、そして2階、3階と建物の階をあがるごとに、乾燥と磨きを繰り返し、シェルと呼ばれるコードバンを丁寧に削りだしてゆく、革の宝石にも例えられるこの美しいコードバンを作る工程は、決して簡単ではない、工場内の熟練した職人さんたちはみな笑顔で作業をしている。情熱と誇りが昔から変わらない品質のコードバンを作り出している。

スキップに案内された社長室にはファミリー企業らしく、創業者の写真や家族の写真が部屋中に飾ってある。「これが創業者の1代目」「これはうちの娘、彼女は乗馬をやっていて、親子で馬にはお世話になりっぱなしだよ」と笑いながらジョークを飛ばす。

「息子は今ニューヨークでシェフをやっているんだよ。実はヒロキやvisvimのことも結構良く知ってるみたいだよ」

「あ、それは光栄です」

「これは僕の趣味でヴィンテージモーターボート、週末ミシガンレイクに行くのが楽しみなんだよ」と、何とも暖かい感じの会話がつづく。

アメリカでは数少なくなったタナー、ほとんどのレザータナーは国外に移転か廃業してしまった。品質を守り、昔ながらのレザー作りを行う事は簡単ではないであろう。そして彼らのように情熱とプライドで良いプロダクトを作り続けているファミリー企業はもはや少ない。

今年に入って、またシカゴの彼の工場を訪れた。オヘア空港につくと、4代目のスキップが車で迎えにきてくれた。そして車に乗り込むと、とびきりの笑顔でこう言った。

「ヒロキ、息子のニックも一緒に仕事をすることになったんだよ」

「あ、そうなんだ。5代目の誕生だね」

なぜだろう、心の底から、そして自分のことのように嬉しい。そして、今から5代目と一緒に仕事をするのが楽しみだ。

Dissertation on The Authenticity of Utility / Published by cubism inc. 2009