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Dissertation

Jacquard Woven Blanket / ジャカード織りブランケット

「ジャカード織り」とは、織りの技術により複雑な文様を表現した生地のこと。すでに織上がった生地に図柄を印刷・転写するプリントに対して、ジャカード織りでは部位によって織物の組織を変えながら図柄を表現するため、生地に立体感が生まれ、より高級感があり重厚な趣を持つ。

Category:Material
Date:2023.02.28
Tags: #Blanket #Jacquardwoven #ss23 #visvim #wmv #ジャカード織り

「ジャカード織り」とは、織りの技術により複雑な文様を表現した生地のこと。すでに織上がった生地に図柄を印刷・転写するプリントに対して、ジャカード織りでは部位によって織物の組織を変えながら図柄を表現するため、生地に立体感が生まれ、より高級感があり重厚な趣を持つ。不規則な織りにより複雑な柄が制作できるため、デザインの自由度が高く、大胆さも緻密さも幅広く表現できるのも特徴のひとつ。

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その名称は、1801年に「ジャカード織機」を発明したフランス人ジョセフ・マリー・ジャカール(Joseph Marie Jacquard) にちなんでいる。この自動織機の発明によって、それまで数人がかりで経糸(たていと)を上下させながら行っていた織りの工程が、1人で織機を操作して行うことができるようになった。その原理とは、紙に多数のパンチ穴を開け、その情報(穴が開いているか/開いていないか)をもとに経糸に上下開口の命令を送り、織機を作動させるというもので、このアイデアは後に機械式計算機の発明の元となり、現代のコンピュータ・プログラミングにまでつながっている。

こうした自動織機があるとはいえ、現代においても実際にジャカード織りが完成するまでには、長く手間のかかる工程と高度な技術が必要になる。まずデザインを元に図案を起こし、「紋紙」と呼ばれるパンチカードを作成する。作られた紋紙には無数の穴が空いているのみで、一見するだけではまったく図柄はわからないが、そこにはすべての文様の情報がインプットされている。現代では、紋紙の情報をデータ化してコンピュータ制御することにより、工程を省略するとともに、複雑な絵柄や大きな生地を表現することができる「電子ジャカード織機」も広く普及している。

織機はこの情報データを読み取り織り上げるわけだが、織機を動かす前の事前準備として、経糸と緯糸(よこいと)の長さ/本数/張力を整える「整経」の作業がある(そこで使われる糸の多くは、経/緯ともに染色の工程により先染めされたものとなる)。その後、織機に糸をセットして織り上げていくが、その過程においても、文様にズレなどがないか試し織りでチェックし、また織機の稼働中も糸の切れなどがないか、職人が常に目を光らせておく必要がある。

織機上部から下りた無数の紐が経糸と繋がっており、それをコンピューター制御により上下させることで複雑な柄を表現する。

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SS23シーズン、〈visvim〉〈WMV〉数型のプロダクトで使用したジャカード織りのブランケット生地。その制作を担った、1896年(明治29年)創業の毛織物メーカー「株式会社ニッケ」のデザイナー大野正博さんによれば、今回使用した生地はすべてたった1台の電子ジャカード織機で織られたものだという。

「一般的にウールのブランケット生地では緯糸にはウール100%の紡毛糸を打ち込むのが通例ですが、今回のジャケットの生地では経年変化による美しさが感じられる生地の質感を求めて、経糸にはドライなタッチで硬さのあるリネンコットンを、緯糸にはふっくらした紡毛糸とリネンを撚糸した原糸を、それぞれの素材が持つ色相を生かしながら打ち込んでいます。こうした特殊な交撚糸の使用や、多色使いで大きなリピートの柄のジャカード生地を織るのに適した織機とそれを扱う職人を選定していった結果、ある1台の織機だけで織るという形になりました」

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生地は凹凸ある手触りで不均一な味わいがあり、厚く耐久性も高い。手洗いによる洗濯も可能。さまざまな発明の歴史を経て、進化しながら続いてきた織りの技術と文化を改めて捉え直し、現在から遠い未来まで愛用することのできる新たなプロダクトが誕生した。

井出幸亮

写真、動画深水敬介

動画編集: cubism