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Dissertation

Italian Leather / その土地で培われてきた技術

ヨーロッパのファッション産業の中でも、特にイタリアにはファブリックやレザーなどものづくりの伝統が残っています。ファミリービジネスでやっている中小企業のメーカーや、数名だけで運営しているような小規模の工房もたくさんあって、そこではやはりクラフトマンシップが確かに受け継がれていると感じます。

Category:Material
Date:2026.01.06
Tags: #leather #ss26 #visvim

その土地で培われてきた技術

20年ほど前、レザーに詳しい知人の方に紹介され、イタリア・トスカーナ地方のレザー工房を訪ねて回ったことがあります。その際、僕が好きなヴィンテージ・アーカイブのレザーを持ち込み、工房の人たちに見せて「こんな風合いのレザーが欲しいんです」と話すと、みんなが「これは"ベジタブル・タンニング"だよ」と教えてくれました。植物性の天然成分で作られたタンニンで鞣すその伝統的な手法は、当時すでに化学的な薬品を使って効率よく鞣すクロームタンニングに取って代わられ、廃れかけていましたが、イタリアの一部の工房ではまだその技術が残っていました。

クライアントからの細かな要望に対応できるよう比較的小型のドラムが並ぶ。
新たに提案された素材の表情を確認し細かな要望を伝える。
鞣し工場でのベジタブルタンニングレザーの生産風景。写真は一点一点手で染料を擦り込む染色作業の様子。
鞣しの原材料であるミモザの粉末。自然由来の材料のみ使用しているため素手で触れることができる。

ヨーロッパのファッション産業の中でも、特にイタリアにはファブリックやレザーなどものづくりの伝統が残っています。ファミリービジネスでやっている中小企業のメーカーや、数名だけで運営しているような小規模の工房もたくさんあって、そこではやはりクラフトマンシップが確かに受け継がれていると感じます。そんな工房が集中しているのが北イタリアのフィレンツェ周辺で、タンナー、縫製工場、グローブ専門の工房など多くの人々と長く付き合い、 ものづくりを続けてきました。革製品の長い歴史を持つイタリアの職人たちはやはりレザーという素材の扱いにすごく長けていて、知識も技術も深いんですね。ベジタブルタンニングと一口に言っても、ミモザやオリーブなど、使う灰汁の種類によって仕上がりは変わってきます。もちろん、レザー自体の種類も豊富で、肉厚で張りのある馬の臀部のホースレザーや、柔らかく強度のあるペッカリー(イノシシに似た中型の偶蹄類)レザー、カンガルーレザーなど、それぞれに特徴があり、扱いも異なります。

レザー専門の縫製工場でのシープスキンジャケット生産風景。
縫製前のパーツ取りは素材の表情、必要な大きさの組み合わせを検討し一つ一つ手作業で切り出される。
素材の柔らかさを活かすよう適度なテンションで縫合される。
0126105014004 DAYTON JKT SHEEPSKIN IT

昔ながらの手法を受け継ぐ職人たちに対して、僕たちが一般的でないユニークな手法のリクエストをすることも少なくありません。綺麗に仕上げた革をもう一度、水で洗ったり、顔料を乗せてみたり......求めている表情が生まれるまで、さまざまな実験を繰り返します。あるときは、コードヴァン製造の過程で出る「B品」という扱いで商品に使えないとされていたレザーがあったのですが、僕は逆にその雰囲気がすごくかっこいいと感じて、それを使って作ってもらったり。彼らの"常識"とは違うアイデアですが、職人の方々はむしろそうした提案をオープンに受け入れ、一緒にトライすることを楽しんでくださっているようです。 イタリアで縫製したレザージャケットを、日本の工場に持ちこんでウォッシュ加工することもあります。日本には加工の長い歴史があって、そこで培われてきた豊かな技術があるからです。もちろんアメリカのある工場にしか出せないレザーの味だってある。それぞれの場所で育まれてきた文化や技術があり、得意とする技を活かして、互いに発見しながら、長期的な関係の中でものづくりをしていきたいと考えています。

グローブ専門のワークショップでの生産風景。裁断からボタンやタグのディテール付け、それぞれのパーツの縫製作業まで多くの工程を手作業で行う。使い始めから手に馴染むフィッティングが技術の高さを示す。

0126103003004 LEATHER GLOVES

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文:井出幸亮

写真:深水敬介