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Dissertation

visvim Fall and Winter 2025

ウールという素材が持つ可能性に注目して、数年前からさまざまなテストを繰り返し、新たな機能や表現の可能性が拓けてきました。

Category:Philosophy
Date:2025.07.29
Tags: #fw25 #visvim #wool #ウールの新たな可能性を拓く

ウールの新たな可能性を拓く

ウールという素材が持つ可能性に注目して、数年前からさまざまなテストを繰り返し、新たな機能や表現の可能性が拓けてきました。

羊など動物の毛から作られる天然繊維であるウールは保温性と吸湿性に優れており、また軽くて汚れにくく、撥水性や難燃性もある機能的な素材として、昔から人々の暮らしの中で利用されてきました。登山などのアウトドア・アクティビティのシーンでも、汗をかいても蒸れにくく乾きやすいウールの肌着は重宝されてきましたが、かつては加工技術の限界から繊維が太くて固く、着心地の面ではあまり良いとは言えないものでした。近年では技術革新により繊維を細くすることが可能になり、スムーズな肌触りのものが生み出されています。〈visvim〉のプロダクトでは17.5マイクロンという極細の柔らかい繊維を使って編み立てているので、肌に対する繊細な感覚を持つ女性の方でもしなやかで心地よい質感を感じてもらえると思います。

またウールには「洗濯によって縮みやすい」という弱点もありました。水分を含むと繊維の表面にある「スケール」と呼ばれる鱗状の組織が立ち上がり、擦れることで絡み合って解けなくなってしまうからです。この点でも、加工技術の進化により新たに開発された、洗っても縮みにくいウォッシャブル・ウールを使用することで、日常的なライフスタイルの中で使える機能性を追求しています。

こうしたユーティリティ面だけでなく、その表情や質感においてもウールには新しい可能性があると感じています。例えば、今シーズンに登場するウールのスウェットパンツ(*1)。スウェットの素材には通常コットンが使われますが、ウール糸に特殊な加工を施すことでコットンに近いドライでラフな風合いを表現し、ウールの高い機能を持ちながらスウェットらしいマスキュリンなテイストを持つ一着に仕上がりました。

ウールのコーチジャケット(*2)もそうしたプロダクトのひとつ。コーチジャケットと言えばもちろん、あの独特の光沢を持つナイロン素材が思い浮かびますよね。そのナイロン的な質感を、ウールにシルクを組み合わせることで表現しています。パッと見ただけではほとんどウール製品に見えないかもしれません。そもそもナイロン素材などの化学繊維は、かつて天然繊維の代替物として工業的に開発された素材だと言えますが、僕たちはそのテイストを活かしつつ、それらをナチュラルなものへと"戻す"作業をしているようなものですね。まだ誰も試みていない、そんなチャレンジが面白くて、さまざまな実験を続けています。

遠い昔から人間が暮らしの中で利用してきた天然素材には素晴らしい機能性と魅力がある。それを現代の技術と感性で進化させて、未来へと長く使い続けられるプロダクトを作り出していきたいですね。

*1 0125205010010 SWEAT PANTS (SUPERFINE) 
*2 0125205013003 COACH DOWN JKT 

文:井出幸亮

写真:深水敬介

Dissertation on Quality We Treasure

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