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神戸に新しいお店をオープンしました。三宮の南、海側にある「旧居留地」は戦前のビルディングが多く残っている素敵な街で、いつかお店を作れたらと思っていたところ、良い物件に出会うことができました。

Category:Shops
Date:2025.04.30
Tags: #coffee #contrarydept #indigocampingtrailer #kobe #littlecloudcoffee #visvim #wmv #wmvvisvimkobe

ずっと昔からこの空間に存在したかのように。

神戸に新しいお店をオープンしました。三宮の南、海側にある「旧居留地」は戦前のビルディングが多く残っている素敵な街で、いつかお店を作れたらと思っていたところ、良い物件に出会うことができました。1938年にチャータード銀行神戸支店として竣工した鉄骨鉄筋コンクリート造の近代建築「チャータードビル」地上階。ファサードに欧米の古いホテルなどで見かけるようなクラシックな木製の回転扉があって、中に入ると2階まで吹き抜けの大空間が広がっています。

内装にはオリジナルのデザインが多く残されていましたが、もともと銀行だったというだけあり、床や壁などの素材や装飾を含めて、かなり重厚で固い印象でした。これまでの店舗の中でも最もキャラクターの強いスペースでしたが、その個性を活かしながらも、より心地よく過ごせる空間にしたいと考えました。

まず気に入ったのが、壁面に並ぶ大きな縦長のガラス窓からたっぷり自然光が入ること。オリジナルの意匠であるメカニカルな構造の開閉式の窓が残っていましたが、それらはすでに錆びついて開かなくなっていました。ビルの管理会社でこれらを現代的な新しいフレームに変更するという計画があったのですが、僕はこの風合いの魅力を残したかったので、レストアを施し、そのままの姿ですべて動くように直しました。光とともに海からの風も感じられるようになりました。

美しい光を柔らかく受け止めてくれるよう、壁は本漆喰で仕上げたほか、アフリカの木材ブビンガを使った回転什器や和紙に市松模様の型摺り染めを施した襖などを設え、有機的で自然な雰囲気が生まれるよう考えました。コーヒーカウンターのある2階へと続く階段の手摺も金属から木に変更し、大工さんに角部を削っていただき手触りの良い曲線に。コーヒーカウンターは日本の伝統的な「名栗(角材や板の表面に「手斧」などの大工道具で独特の削り痕を残す加工技術)」の手法で仕上げていただきました。1階の大谷石を積み上げて作ったカウンターも、実は石の角が繊細な丸みを帯びるよう、カットした石材を少しずつ削り落としているんです。

床面はかつて銀行として使われていた時代のテラゾーやコンクリートが傷や汚れもそのまま残っており、当時のカウンターやバックヤードがどこにあったかまでわかる痕跡がありました。このビルが持っている歴史や生々しさを活かしたいと思い、一部を修復した上でそのまま使っています。一方で天井のスポットライトやペンダントライトは、1930年代当時のライトからインスピレーションを受けてデザインし、シェードやガラスも含めすべて一からオリジナルで制作しています。ライトを点灯してテストし、少し光が強すぎると感じたので、シェードの内側をひとつひとつ塗り、微妙な調整をしました。どれもごく小さなことですが、こうした人の手を通した作業の積み重ねによって、古い建物との間に調和が生まれます。ずっと昔からこの空間に存在したかのように、自然になじんでほしい。お店づくりも、あくまで洋服のプロダクトを作るのと同じ感覚で取り組んでいます。

WMV VISVIM KOBE
兵庫県神戸市中央区海岸通9-2チャータードビル1F
078 332 8077

文:井出幸亮
写真:深水敬介

2025.4.30 Republished with revisions

2024.12.5 Original work published