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Dissertation

F.I.L. GINZA

僕が感じる街の魅力とは、そこで暮らしたり働いたりする人々の営みが生み出すリアリティ。このお店づくりにおいて考えたのも、ただかつての姿を表面的に復元することではなくて、そこにあった人間のリアリティを取り戻したいということでした。

Category:Shops
Date:2024.06.30
Tags: #f.i.l.ginza #fil #freeinternationallaboratory #ginza #visvim #銀座

2023年10月、銀座一丁目にオープンした新しい〈F.I.L.〉のショップは、昭和通り沿いにある1932年竣工の3階建てのビルをリノベーションしたものです。高層ビルが建ち並ぶ大通りに一軒だけ残った小さな近代建築で、黄土色の加飾タイルの外壁が印象的でチャーミング。元々この建物は油屋さんだったらしいのですが、約90年の間に変遷を経て随所が変更されていたので、店舗にするにあたり、できるだけオリジナルの姿を取り入れる形で改装することにしました。

そのひとつが、ビルの各階に複数ある縦長の滑り出し窓。それらの多くは現代的な窓に変更されていましたが、建物の奥に少しだけ遺されたオリジナルの窓を参照して、金属加工の職人の方に同じデザインのサッシを新たに作り直していただきました。また一部が破損していた外壁の加飾タイルも、スクラッチタイルのような凸凹のある特徴的なタイルを当時とほぼ同じ製法で作れる工房を探しあて、復元することができました。オリジナルと見分けがつかないほどの仕上がりで、日本にこうしたかつての技術が残っていることが嬉しかったですね。

建物内部の天井を剥がすと、木造の躯体が顕わになりました。天井の杉板に当時の大工さんや製材業者が書いたと思しき文字が残っていたり、梁には手鋸で切ったガタガタとした跡があったり。人間の手を使って作られたものには、それを作った人のキャラクターみたいなものが滲み出ます。僕はそうした部分に魅力を感じるので、あえてこれらが見えるよう残すことにしました。

階段部分は、京都で日本建築を作る集団「三角屋」の大工さんたちに設えていただきました。手すりは角材に釿(ちょうな)で独特の削り跡を残す「名栗」の手法で仕上げています。ショップ入口にある小さな植栽スペースは、元々生えていた大きな紅葉の木を活かす形で、庭師の安諸貞男さんにお願いしました。

銀座にはこうした歴史を感じさせる建物がかつて多く残っていましたが、どんどん少なくなってきていますよね。僕が感じる街の魅力とは、そこで暮らしたり働いたりする人々の営みが生み出すリアリティ。このお店づくりにおいて考えたのも、ただかつての姿を表面的に復元することではなくて、そこにあった人間のリアリティを取り戻したいということでした。観光用の見世物や博物館の収蔵品としてでなく、今、生きている僕らにとっての本質的な魅力を感じるものを作りたい。保存するだけでなく、必要に応じて手を入れながら、大切に使い続けていきたいですね。

F.I.L. GINZA

東京都中央区銀座1-20-17

03 3528 6500

文:井出幸亮

写真:深水敬介

2024.6.30 Republished with revisions
2023.10.06 Original work published